「何あれ・・・。」


「ん?」


「廉のピッチおかしい。」


「ああ・・・。」


「緊張してるのかな・・・・。」



三星が入ってきて廉は部室棟のほうへ走って逃げてしまった。


「ちょ、廉・・!準さん、ちょっと行ってくる!」


「いってらっしゃい。」



05.Roman qui a dit la fin




部室棟のほうへいくと廉が怯えているのを畠が脅しているように壁に足をつけているのがわかった



「廉っ!畠アンタ何してるのよ!」


「ッチ、兄妹そろってホントムカツクよな。」




「やっぱあん時、腕折っときゃよかったか!?」


「それ以上言ったら許さない!」

私は廉をかばうように横に入った。


「お前もお前でシニアの四番やりやがってよ!
 向こうでは女一人だったのか!?男にまじって野球ごっこしてたのか!?」

「うるさい!あんただって。廉を使おうとしなかった!
 廉は、指示によってすごくいい投手なのに!
 あんたは使おうとしない!それが三星を駄目にしたんじゃないの!?」


「うるせえ!」


畠が私を思いっきり殴った


「!!」


がさっと阿部くんが焦って出てきた。


「何やってんだよ!喧嘩とはいえ、相手は女だぞ!?」


「阿部・・君・・・。」


「じゃーな三橋。」





「お前、大丈夫?」


心配そうに私の顔を覗き込む。距離が近くて恥ずかしい。
じぶんの体温が上がっていくのを感じる。
阿部くんってこんな表情するんだ・・・・。
ちょっと意外かも。



「だ、大丈夫。ちょっと口切れただけだから。」



かばんの中からハンカチを出して血を拭う。


「廉、何もされてない?」


「うん、ご、ごめん。」


「なんで廉が謝るわけ。私準さん待たせてるから、行くね。」


ぎゅっと廉が私の腕を握る。


「どうしたの。廉。」


「行かないで。」


「廉、廉は試合に出なきゃ駄目。」

「うっ・・・。」


「廉は逃げるの?三年間のケジメを投げるのね。」


・・・?」

「そんなの、私が知ってる廉じゃないよ。私廉のこと見てる。」

すっと手を解いて阿部くんに後はヨロシクと告げた。


「なあ、三橋!」

「わ、私?」

「おう。」

「何かな。」

「学校で話、あるから。」


「・・・うん、わかった。」


私は準さんの元に戻る。



準さんはあふと欠伸して私を待っていた。

「なんて顔。してんの。」


「え・・・。」

「ちょっとおいで。」


準さんは私の手を握るとずんずんとベンチから出て外まで連れてきた



「じゅ、準さん?」

「泣きな。」

「・・・・な、なんで。」


胸に無理やり私の頭を沈めた。


「我慢してたんだろ?」

「してな・・」

「してた。なんかあったんだろ。泣けよ。」

「じゅ、じゅんさ・・・ん。」

「やっぱり俺、ここ許せないよ。」

「ん・・・」

「お前こんなに泣かせて俺は、許せない。」

「いや、いや。あ、ありがとう。」

「ん。で、どうする?」

「え?」

「もどる?」

「や、やだ、恥ずかしいもん。」


「じゃあもうちょっとだけこうしてるか。」

「うん。」


準さんの鼓動が聞こえる。

安心して聞くことができる。


「準さん。戻ろうか。」



試合は終盤。九回ウラ。


廉はストライクをとって。


三星学園に勝ったのだ。




「よかったな、。」

「うん。よかった。」


胸を撫で下ろし準さんに頭を撫でられる。


「わ、」


「寄り道して、帰ろうぜ。」


「うん!」

私は準さんに手を引かれ正門までやってきた。


「あ、野球部。」

「え、嘘!」


私と準さん、西浦、三星と鉢合わせになってしまった。


なんだこの気まずい雰囲気は。


「三橋、。」

「な、何。」


畠と三星がつかつかこっちにくる。
準さんが私を後ろにまわした。

「ごめん!」


「!」

準さんはかなり驚いた表情をしていた。


「ハァ!?」


私は驚いてこうしかいえなかった。


「お前を散々馬鹿にして、ごめん。」


準さんは見下ろしてるだけだった。
こっちにフッと顔をやりどうする?と聞く。


「お前、凄い四番だったのに・・・本当ごめん。」

「別に、謝罪してほしいとこはそこじゃない。」

「え、」

「女が野球をやれないって言ったことに対して、」

「畠そんなこと言ったのかよ・・・。」


シュウちゃんはあきれながら言った。


「シュウちゃん・・・。野球みたよ。」

「お、おう。」

シュウちゃんは顔を赤らめ返事を返した。

「シュウちゃんフォーク上手になってたね。」

「きっと今のお前でも打てないんじゃねえ?」



「そうね、きっと、打てない。」


当時にはありえない私の弱気な発言に
廉を含め当時の私を知ってる人は目を見開いた。


「・・・どうした、。」


準さんはびっくりしたみたいに驚いた。


「きっと、できないと思った。今なら打てないよ。練習してないもん。」

「お前なら打てるよ。」


準さんが言う。

弱気だったかな・・と思う。


「だから、そんな弱気似合わないぞ。」


「うん、ごめんね。」



も、三橋も。本当に。ごめんな。」



「いいよ、シュウちゃん。ありがとう。」



にっこりと笑う。

シュウちゃんはぼっと顔が赤くなった。



私は向きを変えて廉のほうを見る

「廉。おめでとう。」


「うん、」





私は願うのだ。
この私のもう一人が

自信をもてるように。