私は車の中で勝利と叶君のことについて考えてた。

考えるたび顔が赤くなる。



・・・・・・・いきなりは反則だ。



青春ランナー06






「・・・・・ぃ・・・・」



「おい!!」



悠一郎くんの声にびくぅと飛び跳ねる。


「何!?」


「お前モテモテだな!!」


「そんなことないよ。やだな。逆に恥ずかしい・・・。」


顔を赤らめると私は窓の外へと目線をそらす。


「そっぽむくなよー!!」

「やっ、やぁよ!」

「うはは!!かわいーな!!」

「うっさい!!」



いよいよ。合宿が終わりそうになっている。

この勝利と喪失感が私の心を妙に寂しくさせた。




「廉くんおつかれさま。」

ちゃん・・・・?」

「眠かったら寝ていいよ?」


「う・・・うん。」


「起こしてあげるからね。」


そういうと廉くんは安心したのか私の肩に寄りかかって寝てしまった。
幼馴染なんだけど、五年間は大きい。
こんなにも・・・変わったんだ。





廉君は合宿場につくとまたすぐ寝てしまった。
阿部君は何かを確信したかのような笑みを浮かべていた。



そして合宿は終わった。




そして次の部活のとき私は早起きしてしまった。

いや、性格には眠れなかったが正解。




嫌な・・・夢を見た。


いや、いい夢なんだろうか。


途中からいい夢になった。


私が、の家に居たころだった。

母は死んだ。私がうんと幼い頃に死んでしまった。

それから父さんは一向に帰ってこない。

お婆様と二人きりで過ごす日々が続いた。




『お前は家の巫女なんかじゃない!』

『おば・・・あ・・・さま?』



お婆様の巫女の修行は酷いものだったし、罰は酷かった。
生傷、痣は耐えなかった。


私はもう限界だった。

『じゃぁかしいっ!!お前はもうの巫女ではない!』
『・・・・・・それならば、松林家か風祭家の
       どちらかの女に継がせればよいではありませんか。』


『この恥知らず・・・!』

『うるさい・・・。』


『うるさいわ!この出来損ない!』

『うるさい!うるさい!うるさい!黙ってよ!
 別に私じゃなくてもいいじゃない!なんで私にそんな義務があるのよ!?』

『もうどこへでも行け!恥知らず!』

『いくわよ!いってやるわよ!
こんな家もうこりごりだわ!!!』

『行くあてもないくせにかっこつけるんじゃないよ!』



『あるわよ。』



『・・・・・・・。』


『本家にいけばいいのよ。』



『なんじゃと!?』

『明仁様なら私を可愛がってくださる。もう、本家には二度と顔を出さない。』


『・・・・・劣悪な母親から生まれた結果がこれか。』

『母さんを愚弄するな・・・!』



そういって私はから出て行った。

明仁様、本家の頭首。

若くしてありながら、立派な素敵な物腰の人。
神は肩ぐらいで優しい目をしてて
私にいつも笑顔を向けてくれる。

私だけの太陽。

私の兄さんみたいなヒト。


『明仁さま。』
『おや。ではないですか。』
『明仁さま・・・・!私っ・・・私っ』


伝えたいことはたくさんあった。

足が痛い。

体が痛い。

心が痛い。


何よりも、助けて。



『無理をするのではありません。』

『明仁・・・さま。』


ぐらりと視界が変わる。
私の目には大きな空。
そして、体全体にわたりくる大きな暖かさ。

明仁様に抱えられているのが判った。



『いまは休養なさい。巫女の修行といい美鈴の体罰は酷かった・・・。』


『あっあきっっ明仁様っ・・・・!!!!』

目から大粒の涙が出てこようとそれを制御する術は持っていなかった。


『辛かったですね。。』


私が求めていた。優しい言葉。

私が求めていた。優しいヒト。



『・・・・!』

明仁さまはぎょっと私の足を見る。


『・・・・、足は平気ですか?』

『・・・・もうわからないです。』



私の足の片方は一本曲がるはずのない方向に

もう一本は大きな痣がひとつ、ふたつ。



。病院にいきましょう。それと私が神水をつくりますので
         どうして早く言わないのです。あなたは・・・・。』

『・・・・あきひと・・さま。』



『・・・痛くないのでしょう?神経がつながってないのでしょう?』


ぽろぽろと明仁さまは涙を流した。
明仁様は私を支えるように抱きしめた。
抱っこ。いい気持ちでずっと忘れていた暖かいもの。


『明仁さま・・・どうしてなくのですか?』

『あなたが・・・かわいそうだからです・・・・。』

『可哀想・・・ってなんですか?』

『・・・。』

『可哀想って何時使うんですか?可哀想・・って今の私なんですか・・・?
 怖い・・・怖いよ。うっううぅえぇっ!!』


このとき私は子供という感情を戻したかのように
ぽろぽろと涙を流した。


。あなたの帰る場所はここです。おかえりなさい・・・。』

『明仁様・・・ただいま・・・・・。』



そして私は中学には明るい性格にもどっていた。


。』

『はい。なんでしょうか!?』

『高校はどうします?』

『決めてなかったです・・・えへへ。』


くすくすと明仁様は笑った。

『そうですか・・・では、早く決めなければいけませんね。』

『で・・・でも。』

『お金のことなら気にしないでください。 
   あなたは今、楽しまなきゃいけない時期です。』


『でも足を出すのは嫌だな。まだ治ってないから。』


『いえいえ。もう少しですよ。夏になれば痣もすっきり消えます。』

『ほんと!?ありがとうございます!明仁様!』

『えぇ。頑張って神水をのんだ成果ですよ。えらいですね。』


大きな手で私の頭撫でてくれるその手が大好き。


『西浦なんてどうですか?』

『ここから遠くないですか?』

『それなら構いません。一人暮らしはできますよね?』

『え!?でもお金が・・・』

『気にしないって言ったでしょう。
私達の遠い親戚に百枝まりあという方は覚えてますか?』

『はい!』

『彼女が男子の硬球野球部を受け持つそうです。
     それなら安全かな・・・と思ったのです。』

『明仁さま・・・・。はい。頑張ります。』

『はい。そこなら私服ですから。にーそっくす・・・でも平気だと思います。』


私は涙が堪えきれず明仁様に抱きつく。

『おっと・・・こらこら、喜ぶのは入学からですよ。』

『はい・・・!はい!明仁様大好きです・・・!』


『ふふっ・・・私もです。』


そして、入学して私は西浦高校で過ごしてるということになる。

ニーソックスもコレが理由。


私の膝には切り傷でぱっくり開いた跡の痣と骨折の跡の痣が
大きく残っている。





「おはよう、。」

「おはよう、栄口くん。廉くん。」


「今日早くない来るの?」


「え、ああ。早く起きちゃったし、朝ご飯作らないで置いてある奴食べたから。」


「・・・・・って何人でくらしてるわけ?」


「一人だよ。」



「ひっひとりぃ!!?高校で!!?」



「え?えぇ、まぁ。」


栄口くんは驚いた顔で見てきた。






「おはよーぉ!さぁ!今日から練習前に瞑想するよー!」



シガポがまた何か思いついたみたいだった。




私はアクエリアスを継ぎ足すことに専念しててよく聞こえなかった。





「篠岡!!!!!!!足元にヘビ!!!!!!!!!!!!!」





























「いやああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!!!」















千代の大声だけがよく聞こえた。


私は不安になってあわてて外に出る。






「どうしたんですか!!?千代平気!!!?」









!!!!!ナイフが足を狙ってるぞ!!!!!!!!!!」








『刃物ぐらいよけれないで家の巫女がどうする!』



『刺さりたいのか!?馬鹿じゃないか!!!!』




よみがえる記憶。



明仁様は思い出さなくていいって言ってた記憶が



鮮明に・・・・。








ぽろぽろぽろと私の涙が頬を伝った。




!!!?」



一番最初に私に駆け寄ってくれたのは梓だった。



「め・・・・な・さ・・・・い。」


・・・?!!どうしたんだ!!!?」



「ごめんなさい・・失敗してごめんなさい・・・・!!」


頭を抱え込んでしゃがみ込んで泣き崩れる。



!!?!!」



「あきひとさま・・・・あきひとさま・・・たすけて・・・・・。」



まりあちゃんが焦って駆け寄ってきた。




「志賀先生!!何したんですか!!?」


「あぁ・・・いや、α派をだすのを見せたくて・・・・。」


「問題は台詞です!」


「ナイフが飛んでくる。って言ってみたんだけど・・・・。」



「先生には言うべきでしたね。ちゃん、ナイフと骨折って言葉。
     特に自分に向かってくるっていうと、過剰反応しちゃうんです。」


「そうだったの。悪いことしたね・・・・。」


「理由は・・・この子の許しをもらえるまで言えないんです。」


「あきひ・・・と・・・さま。」


ちゃん。」


「まりあ・・・ちゃん?」


「大丈夫。私はココにいるし、御婆ちゃんは居ないよ。」



「・・・私・・・・え・・・・。」



、大丈夫か!?」


梓を中心に皆が心配してくれてる。


あぁ・・・・そうか。



もう、お婆様は居ない。





「ごめんなさい。取り乱して。」





「すこし青いぞ。顔。休む?」



悠一郎くんが心配して駆け寄ってくる。



「ごめんね。皆。ごめん。」




「いーよ!お前が平気なら!」


にっと笑って悠一郎くんは私の頭を撫でてくる。

明仁様を思い出した。




「すみません。いきなり泣いたりして。 
        大事な時間なのにとって申し訳ないです。」



「いや。悪かったね。」



「アイスで許してあげます。」

は立ち直り早いねー・・・・。」


「ハーゲンダッツじゃないと許しません。」


「・・・・・・・。」



梓はまだ納得が行かないらしく私をじっとみてくる。



「あずさ?」



「お前さ、家・・・どうなってんの?」



「・・・・・・ごめ。私はそれいえないと思う。勇気がないから。ごめん。」



「・・・・・・・悪かったな、へんなこと聞いて。」


「ううん。心配してくれてありがと。」



にこっと笑ってみせる。
心配させちゃいけない。きっと。


そんなこんなで瞑想が始まった。



梓とシガポの隣に座って手を繋ぐ。


梓の手・・・大きい。



かあああっと赤くなって体温が自分でも急上昇してることが判る。


恥ずかしい。恥ずかしい。さっき泣き顔も見られちゃったし。


なんだこれ。

恥ずかしい。予想以上に恥ずかしい。



目を瞑っても、鼓動が元にもどらない。

恥ずかしいんだ。とっても。



梓の手の体温が冷たいから私のを上げる。

シガポの体温が冷たすぎる感じがした。




瞑想が終わった。




は体温たかいねー。」



にやにやとシガポが笑ってくる。



「ハーゲンダッツもう一つ追加で。」



「ええええ!!?」




「でもまじ熱かったぞ?熱あんのか?」


「なっ・・・・・


手をおでこに当てられる。




  ないったら!!!!!」




顔が本気で破裂するぐらい顔が赤くなった。



「お前顔赤いぞ!?」


「うるさいっ!!!」



ベンチのそばで寝てるアイちゃんに近づく。




「アイちゃん・・・。」

「くぅん?」

「アイちゃん・・・わたしなんかの病気?」


「ふん?」


「なんかやだ、すぐ顔が赤くなるし、ドキドキするし
                なんかもう嫌・・・・・・。」
 


へろへろとアイちゃんは私のほっぺを舐める。


「いひゃ、くすぐったいよもうアイちゃんーっ!」




「・・・・わたしどうしたんだろー、」








「楽しんでいるようですね。」



「あっ・・・・!!!!!」




「明仁様!!?」



「ちょっとばかりこちらに用ができたので来ましたよ。
                 まりあはどこですか?」


「まりあちゃんっですか?まりあちゃーん!!」


「あ・・・あきひと!?」




「お久しぶりです。まりあ。」

「なにかようね?」

「ええ。のことです。」

「・・・・なにかあったの?」

「いいえ。多分そちらはしらないことがあったら大変ですので。
    ナイフと、骨折については前話しましたよね?」


「ごめん。手遅れだった・・・。今日・・・おこちゃった。」

「そうですか。あんまり、精神崩壊させないであげてください。
             彼女はまだ囚われている。誰かが救わない限り。」
「明仁は救わなかったの?」



「私は救ったつもり・・・だったのです。偽善に近い行為でした。」


「・・・・・。」

「彼女を救えるのは・・・・・最愛の人物。だけかもしれないのです。」


「・・・・・・・。」


「監督。」



「・・・・・・花井くん。」



「どうも。」


へこりと明仁は頭を下げる。



「あなたなら・・・・いえ。」



「明仁?」




「この部活なら安心できそうだなと思ったので。」



「明仁・・・。」



「よかったと心から思います。」


「明仁様!!!!」



ぎゅっと私は明仁様に抱きついた。



大好きな匂い。やわらかくていいお香の匂いがする。




「あなたに抱きつかれるのも久しぶりです。。」


「なんですか?」


「神水はちゃんと飲んでいますか?」


「ええ。飲んでますよ!」


「それはよかった。ちょっと影に行きましょう。
         足を見せてほしくてきたのもあります。」


「え?あ、はい。いってきますね。まり・・・監督!」


「ん。行ってらっしゃい。」



ニーソックスをめくると
白すぎる足が見えた。


痣は消えかけていた。



「ふん・・・・もう少しですね。」


「え!?あとどのくらい!?」


「んー・・・・甲子園ぐらい・・・ですかね。」



「こうしえん・・・・。」




「完治も近い。まげても痛くないですか?」


「はい!痛くないです。」



きゅっと足をつねられる。


「いた!」


「神経も繋がってますね。」


「いいいい、ううう酷い明仁様。」


「はい、おしまい。前よりとてもよく頑張りましたね。」


「はい。えへへ。」


「私の作る神水はとても苦いし副作用が酷い。」


「確かに苦いけどその後飴を食べてるので。」


「いい心がけです。」


明仁様の作る神水は

とっても苦い。それと副作用は俗に言う媚薬のようなもので
感じやすくなり、何かを欲す。求める。


私はそれに今まで必死で耐えてきた。




頭を撫でられると練習に戻りなさいと言われた。


*           *             *        *


『まりあ。』

『何?』

は恋をしてるのでしょうね。』


『え!!?嘘っ!!!?』


『見ていてすぐ判りました。私が鋭いだけなのでしょうね。長年一緒に暮らしている分。』


『・・・・・・・・・誰?』

『あぁ、心配です!私の娘のようで妹のような子ですから・・・・!!
  万が一変なことがあったら大変です。すぐ私が血の池地獄にでも落とさねば!!
      私は罪にはなりませんよ!私は神子ですし!むしろ神の鉄槌とでも思ってほしいくらいです!!!!
         あああああああああああああああ、心配ですねぇ・・・!!!!!!』


『明仁、無視しないで。親ばか思考になってるし。』


『・・・・・くすくす。』


『・・・・・・あなたっていつも思うけど結構意地悪よね。』


『今から始まったことじゃないでしょうに。』

『まりあ。』


『ん?』


はここで最愛の人を見つけるでしょう。』


『・・・・・ほんとうなの?』


『ええ。』



『・・・・・・・・明仁さ、ちゃんのこと好きなんじゃない?』


『大好きですよ。とても。』



はっきりとした肯定。


『もう嫁に迎え入れたいくらい、私は彼女を愛しています。』



『でも、無理なんです。彼女が愛してる人ではないと。』




『私は親代わりなんですから。』




そう答えた明仁の顔は微笑んではいたが酷く寂しい顔をしていた。



『誰?最愛の人の予想。』


『・・・・くすくすくす。誰でしょうね。』


明仁は嬉しそうな顔を浮かべていた。