似合わない。



判ってはいた。




普段私は料理なんてちっともしないし

不器用。

可愛らしく女の子らしくなんて感じはしない。


駄目か!

私だって!

判ってる。判ってるんだ。


コンプレックスロマンチカ


ー。次の家庭科遅れるよー。」

「あ、うん!今いくー!」

私は授業道具をもって家庭科室に向かう。



「はい、皆さんこんにちはぁ。」

こんにちはーと誠意のない挨拶が始まる。

「今日は男子と別れて調理実習です。」


きゃーきゃーと騒ぐものもいれば
えーっとブーイングするものも

ちょっと待ってくれ


私すごい料理苦手なんだけど・・・!


「今日作るのはクッキーですから、大丈夫ですよね!」


先生のさわやかな笑みに腹を立てたのは久しぶりだった。




、卵・・・われるよね?」

「われるから!」


友達は不安がってこっちをずーっと見てきた。

うん、われるってば。

その不安な視線のまま調理実習は続いた。



「型抜きしよう!」

甘い香りが漂う中型抜きが始まった。


どうするー?」

「え、何が?」

「い・ず・み・く・ん・に?」

「ば、ちょ、違う!あんなんただの幼馴染だから!」

「嘘でしょ。顔真っ赤だもん。」

「うぅっ・・・!?」


「あげるの?」


友達がによによして聞いてきた。


「やらん!即効家帰って食べる!」


「そんなこと言ってー。」

泉孝介。

私と生まれたときから一緒に居るようなものだった。
家が隣で部屋も隣。窓から出入りすることもしょっちゅうだし
仲は悪くないと思う。たぶん


「そんなんだったら兄さんにあげるって!」

「あー、誰。」

「孝介のお兄さん!」


「またまたー。でもほら、型抜かないと時間ないよ!」

「うわ、どうしよー。」

私は焦って生地に型を開ける。

星型。ジンジャーマン、など、
可愛いと思い私は似合わないなぁ・・と自己嫌悪に陥った。


「はい、。」

「え、型?」

咄嗟に渡されて5つほど抜いてしまったが

その型はハートだった。


「ちょ、アンタなんてもんを!!」

「GJ!頑張ってね!」


「酷い・・・酷すぎる。」


焼けたクッキーを見るたび胸がなんといっていいのかきゅうっとなった。


「綺麗に焼けたねえ!」

友達よ。ちょっと埼玉川に沈んできてくれ。
タマちゃんと泳いで来い、そして。永久に。永遠となれ。

先生からラッピング素材を渡されて
きゅっと黄色のリボンを結ぶ。


家庭科の時間が終わり昼休みになった。


孝介のほうにちらりと目線がいった。
なんて渡せばいいんだろう。


あまったからあげるなんてちょっと酷い。

これ作ったんだけどなんてちょっと無愛想。

孝介のためにつくりました!ちょっと気持ち悪い。



結局昼休みが終った。


帰りのしたくが始まるなかどうしていいかわからないものが
鞄の一部を占領してた。

くそー・・お前のせいだぞとも言えず。


ちらっと孝介をまた見た。




あれ、


手に持ってるのって。


他の女子からのクッキーじゃんか。





私は虚無感と絶望感に襲われた。

馬鹿みたい。



帰路につくと家には20分くらいでついた。

ぼすうとベッドに身をうずめた。

だるくてだるくて力が入らなかった。


気がつくと外は暗い。

時計も9時を回っていた。

やばっと思って顔を上げる。


「うわー・・やっちゃった。」


「何が?」

「は?」


泉孝介が窓から私をみていた。


「ちょ、な、何見てる!」


「お前窓全開で寝るなよ・・。無防備だし危ねーぞ。」

「うっ・・・。」


私は鞄の存在に気がついた。

処分しなきゃなー・・・と会話中に思い出す。
孝介だって女の子らしい子から貰ったほうが嬉しいだろうし。

「なぁ、」

「なにー。」

「お前俺にクッキーねーわけ?」

「自惚れないでください。孝介君。お兄さんは?」

「は、アニキ?いねえよ。」

「あ、そ。」



居なかったか・・・。


自分で食べるには少し抵抗があった。



「で、俺にねーの?」

「しつこいー。」



がちゃっと窓から孝介が侵入してきやがった。

「ちょい、なんで入って来てるの?」

「駄目?てかあるじゃんクッキー。」


鞄の口を開けたまま寝たのを恨んだ。
鞄も埼玉川に捨ててきたい。



「だ、だめだよ!」

「はあ?」


「そ、それは失敗作なの!」

私はクッキーをゴミ箱に捨てるとあわわと言い訳をした。

「ゴミ箱に捨てるくらいなら、俺に頂戴。」



ゴミ箱の前でしゃがみ込んでいる私の手をほどき

ゴミ箱からラッピングされたクッキーをとりだした。


「ちょ、ちょっとそれ。」

「三秒ルールっていうか俺ルール。」


さくっといい音がした。


「うまいよ。」


顔が赤くなったのが判った。

「失敗作じゃねーって。うまいよ。」


「だ、だって孝介・・・他の子に・・・。」


「あ、あれ見てたのか?あんなん野球部に謙譲したって。」


「え?」


「その、さぁー・・・・。お前ほんっと鈍いよなー。」


「え、ごめん。」

「お前以外の食いたくなかったんだって。」


「え・・・・。それってどういう・・。」

「駄目か。好きなんだよ。お前が。」


「駄目じゃないけど・・いいの?女らしくないし。不器用だし、料理できないし。」


「そんなお前がいいんだよ。」


「孝介・・・その。」

、好きだ。」

「私も・・・です。」



泉孝介は大変なものを盗んでいきました。


癸ちゃんにささげます!あいしてる!